子どもの歯を虫歯から守るために、「フッ素塗布」や「シーラント処置」をすすめられた経験はありませんか?
「塗るだけで虫歯予防になるの?」「本当に効果があるのかな?」と疑問を持つ保護者の方も多いはずです。今回は、フッ素やシーラントの仕組みと効果を科学的な視点からわかりやすく解説します。
フッ素とは何か?
フッ素は自然界に存在するミネラルで、歯を強くして虫歯を防ぐ作用があります。歯科医院で行う「フッ素塗布」は、フッ化物を高濃度で歯の表面に塗る予防処置です。普段の歯磨き粉にも低濃度のフッ素は含まれていますが、歯科医院で塗布するものはより効果が高く、特に生えたばかりの乳歯や永久歯に大きなメリットがあります。
フッ素の主な効果
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歯を強くする
フッ素は歯の表面のエナメル質に取り込まれて、酸に溶けにくい「フルオロアパタイト」という構造に変わります。その結果、虫歯菌が作る酸に対して抵抗力が高まります。
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初期虫歯を修復する
「白く濁った虫歯の始まり」の段階なら、フッ素が再石灰化を促して自然に治ることがあります。削らずに済む可能性が高まるのです。
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菌の働きを抑える
フッ素には、虫歯菌の酸を作る働きを弱める効果もあります。つまり、虫歯の進行を二重の意味で防いでくれるのです。
シーラントとは何か?
シーラントは、奥歯のかみ合わせ部分にある「溝」に樹脂を流し込んで塞ぐ処置です。奥歯の溝は細く複雑で、歯ブラシの毛先が届きにくいため、虫歯になりやすい場所です。特に生えたての6歳臼歯(第一大臼歯)は一生使う大切な歯ですが、虫歯リスクが非常に高いことで知られています。
シーラントはこの溝をあらかじめ埋めてしまうことで、汚れをたまりにくくし、虫歯を予防する方法です。歯を削らずにでき、痛みもありません。
フッ素とシーラントは本当に効果がある?
科学的な研究結果
・フッ素塗布を定期的に受けた子どもは、受けなかった子どもに比べて虫歯になるリスクが約20~40%減少するというデータがあります。
・シーラントをした奥歯は、していない奥歯に比べて虫歯発生率が約60%以上低下することが複数の研究で確認されています。
つまり、どちらも「確かな予防効果」が認められています。世界的にも推奨されており、WHO(世界保健機関)や日本小児歯科学会でも、子どもへのフッ素塗布やシーラント処置は有効な予防法として紹介されています。
フッ素やシーラントだけで安心していいの?
ただし、フッ素やシーラントを行ったからといって「絶対に虫歯にならない」わけではありません。大切なのは 総合的な予防 です。
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毎日の歯磨き(フッ素入り歯磨き粉を使用)
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規則正しい食生活(だらだら食べを避ける)
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定期的な歯科健診
これらと組み合わせて初めて、フッ素やシーラントの効果が最大限に発揮されます。特にシーラントは経年で一部が取れてしまうこともあるため、定期検診でのチェックが欠かせません。
親御さんが知っておきたいポイント
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痛みがない処置
フッ素塗布もシーラントも歯を削らないため、子どもにとって怖い体験になりにくいです。小児歯科の予防処置として安心して受けられます。
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タイミングが大切
歯が生えてすぐの時期に行うと効果的です。特に6歳臼歯や前歯の永久歯にフッ素やシーラントを適用すると、虫歯予防効果が高まります。
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繰り返しが必要
フッ素は時間がたつと効果が薄れるため、3~4か月ごとに塗布するのがおすすめです。シーラントも外れていないか定期的な確認が必要です。
フッ素やシーラントは「本当に効果があるの?」という問いに対して、答えは 「はい、科学的に効果がある」 です。ただし、それだけに頼るのではなく、毎日の歯磨きや生活習慣の見直し、歯科医院での定期的なチェックと組み合わせることが大切です。
大切なお子さんの歯を守るために、ぜひフッ素やシーラントを積極的に活用していきましょう。将来、虫歯で困らない健康な歯を育てるための大きな一歩になるはずです。
この記事を書いた人は中村区にある歯医者
かすもりおしむら歯科・矯正歯科・口腔機能クリニック 院長 押村憲昭