
朝起きたときや食事のとき、「あれ、なんだか顎が痛い…」と感じたことはありませんか?
一時的な痛みだと放置してしまう方も多いですが、顎の痛みにはいくつかの深刻な原因が隠れていることがあります。今回は、顎が痛くなる主な原因や対処法、病院に行く目安などを詳しく解説します。
■ 顎が痛いときに考えられる主な原因
1. 顎関節症(がくかんせつしょう)
顎の痛みで最も多いのが、顎関節症です。
顎の関節やその周りの筋肉に負担がかかることで、痛みや違和感が生じます。主な症状は以下のようなものです。
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口を開けるときに「カクッ」「ジャリッ」と音がする 
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大きく口を開けられない 
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顎やこめかみに鈍い痛みがある 
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食事中に顎が疲れやすい 
原因としては、歯ぎしり・食いしばり、ストレス、噛み合わせのずれ、姿勢の悪さなどが挙げられます。特に最近は、スマートフォンやパソコン作業で前かがみの姿勢が続くことで、顎に負担がかかるケースも増えています。
2. 歯ぎしり・食いしばり
寝ている間や集中しているときに無意識に歯を強く噛みしめる「歯ぎしり」や「食いしばり」も、顎の痛みの大きな原因です。
強い力が長時間加わることで、顎関節や筋肉に炎症が起こり、痛みやこわばりが生じます。
また、歯ぎしりが続くと歯のすり減りやヒビ、肩こり・頭痛など全身の不調にもつながるため、注意が必要です。
3. 親知らずや虫歯による炎症
顎の奥の方が痛む場合、親知らずが原因のこともあります。
生え方が悪く歯ぐきの中で炎症を起こしていたり、周囲の歯肉が腫れていたりすると、顎まで痛みが広がることがあります。
また、虫歯や歯の根の感染が顎の骨や神経に波及すると、強い痛みや腫れを伴うこともあります。
4. 筋肉の疲労や姿勢の影響
長時間のデスクワークやスマホ操作で、頭が前に出た姿勢を続けると、首や肩、顎の筋肉が緊張しやすくなります。
この筋肉のこわばりが、顎の痛みやだるさとして現れることがあります。特に「片側だけ痛い」「顎が重い感じがする」といった場合は、筋肉性の痛みが疑われます。
5. 外傷や打撲
スポーツや転倒などで顎をぶつけた後に痛みが続く場合は、関節や骨に損傷があるかもしれません。骨折や脱臼が起きている可能性もあるため、自己判断せずに早めに医療機関を受診しましょう。
■ 自分でできるセルフケア
軽い顎の痛みであれば、生活習慣の見直しで改善することもあります。
以下の方法を試してみてください。
1. 顎を休ませる
硬い食べ物(スルメ、ステーキ、フランスパンなど)や長時間の咀嚼は避けましょう。
大きく口を開ける行為(あくび、歌う、歯医者での長い治療など)も控えると、関節の負担を減らせます。
2. 温めて筋肉をほぐす
痛みのある部分を蒸しタオルなどで温めると、血行が促進され筋肉の緊張が和らぎます。
ただし、炎症で腫れや熱感がある場合は冷やすほうが効果的です。
3. 正しい姿勢を意識する
顎を引き、背筋を伸ばした姿勢を意識しましょう。
スマホを見るときは画面を目の高さに上げるだけでも、首や顎への負担が大きく減ります。
4. ストレスを溜めない
ストレスは無意識の食いしばりや歯ぎしりを悪化させます。
リラックスできる時間を作ることが、結果的に顎の健康にもつながります。
■ それでも痛みが続くときは病院へ
セルフケアをしても痛みが改善しない、または以下のような症状がある場合は、早めに歯科医院や口腔外科を受診しましょう。
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口を開けるときに強い痛みがある 
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顎が「ガクッ」と外れる感じがする 
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顔の片側が腫れている 
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痛みが数日たっても治まらない 
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頭痛や耳の痛みも同時にある 
これらの症状は、顎関節症の中でも進行した状態や、感染・炎症などの可能性があります。
早めに専門家の診断を受けることで、悪化を防ぎ、適切な治療を受けられます。
■ 病院での主な治療方法
歯科や口腔外科では、原因に応じて次のような治療が行われます。
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マウスピース(スプリント)療法:歯ぎしり・食いしばりを防ぐ 
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理学療法:筋肉を緩め、関節の動きを改善 
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噛み合わせの調整:歯の高さを微調整して負担を軽減 
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薬物療法:痛みや炎症を抑える 
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外科的治療:重度の場合は関節の修復や手術を検討 
顎の痛みは、「そのうち治るだろう」と放っておくと慢性化することもあります。
特に、噛み合わせやストレス、姿勢など、日常の何気ない習慣が原因になっているケースが多いため、まずは生活を見直すことが大切です。
痛みが続く場合や口の開閉がしにくくなった場合は、早めに歯科・口腔外科を受診しましょう。
顎の健康を守ることは、食事の楽しみや顔の表情、全身の健康にもつながります。
この記事を書いた人は中村区にある歯医者
かすもりおしむら歯科・矯正歯科・口腔機能クリニック 院長 押村憲昭

