
こんにちは。名古屋市中村区の歯医者「かすもりおしむら歯科・矯正歯科 口腔機能クリニック」です。
「痛くなったら歯医者に行けばいい」「虫歯くらい治療すれば元通り」――そう思っていませんか?
しかし、歯は一度悪くなったら、完全に元の状態に戻ることはありません。
この事実を知っているかどうかで、将来の「歯の寿命」が大きく変わります。
■ 歯は再生しない臓器
人間の体の多くの組織は、ある程度の再生能力を持っています。
例えば、皮膚は傷ついても時間が経てば新しい細胞が生まれ、元のように治ります。
しかし、歯のエナメル質には再生能力がありません。
エナメル質は体の中で最も硬い組織ですが、血液が通っていないため、栄養や修復細胞が届かないのです。
つまり、一度虫歯などで溶けてしまうと、自力では二度と元に戻らないということです。
「治療すれば大丈夫」と思うかもしれませんが、歯医者の治療はあくまで「修復」や「補強」。
削った部分を詰め物や被せ物で補うだけで、本来の歯の強度や耐久性を取り戻すことはできません。
■ 虫歯や歯周病がもたらす“連鎖的な悪化”
虫歯ができたとき、多くの人は痛みを感じてから歯医者に行きます。
しかしその時点で、すでに歯の内部の「象牙質」まで細菌が侵入していることが多いのです。
治療ではその部分を削り、人工の詰め物をします。
これで一見「治った」ように思えても、実際にはもう元の歯ではありません。
そして問題は、一度削った歯は弱くなり、再発リスクが高くなるということ。
詰め物と歯の境目に小さな隙間ができると、そこから再び細菌が入り込み、虫歯が再発します。
このサイクルを繰り返すうちに、削る量はどんどん増え、やがて神経を取らなければならなくなります。
神経を失った歯は脆くなり、最終的には抜歯に至ることも珍しくありません。
歯周病も同様です。
歯ぐきが炎症を起こし、歯を支える骨が少しずつ溶けていく病気ですが、一度失われた骨や歯肉は自然には戻りません。
進行すれば歯がグラグラし、最終的に抜け落ちてしまうこともあります。
■ 「治療=元通り」ではない現実
歯科治療の技術は日々進歩しています。
セラミックやインプラントなど、見た目も機能も自然に近い治療法があります。
しかし、それでも「本物の歯」には敵わないのです。
たとえばインプラントは優れた人工歯根ですが、天然歯のような神経の感覚はありません。
また、歯ぐきや骨の状態を常に健康に保たなければ、周囲の組織が炎症を起こし、インプラントも失われてしまうことがあります。
つまり、「治療で元に戻す」のではなく、「悪くしないように守る」ことこそが、歯を長持ちさせる唯一の方法なのです。
■ 今日からできる歯を守る習慣
「歯は一度悪くなったらよくならない」と言われると、少し怖く感じるかもしれません。
ですが、逆に言えば「今の歯を守れば一生使える」ということでもあります。
ここでは、今日から実践できる基本の習慣を紹介します。
① 正しいブラッシング
1日2〜3回の歯磨きは基本ですが、「磨いている」ではなく「磨けている」ことが大切です。
歯ブラシの角度を歯と歯ぐきの境目に45度に当て、やさしく小刻みに動かしましょう。
力を入れすぎると歯ぐきを傷つけるので注意です。
② フロスと歯間ブラシの併用
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れは約6割しか落とせません。
デンタルフロスや歯間ブラシを使って、細菌の温床となるプラークをしっかり取り除きましょう。
③ 定期検診とクリーニング
日本では「痛くなってから歯医者に行く」人が多いですが、欧米では「悪くなる前に行く」が常識です。
3〜6か月に一度の定期検診を受けることで、小さなトラブルを早期に発見・治療できます。
④ 食生活の見直し
糖分の多い飲み物や間食は、虫歯菌のエサになります。
食後に水で口をすすぐだけでも、虫歯のリスクは減ります。
また、よく噛むことで唾液が分泌され、口内の自浄作用が高まります。
■ 歯を失うと人生の質が変わる
歯の健康は、単に「食べるため」だけのものではありません。
噛むことは脳への刺激にもなり、認知症予防にもつながります。
さらに、発音や笑顔の印象にも直結します。
つまり、歯を守ることは「自分らしく生きる力を守ること」なのです。
一本の歯を失うことで、食事が不自由になったり、人前で笑うのが恥ずかしくなったりする人も少なくありません。
その後悔を防ぐためには、今この瞬間からの意識と習慣が大切です。
■ 歯は「消耗品」ではなく「一生の財産」
歯は、失って初めてその価値に気づくものです。
どんなに最新の治療を受けても、天然の歯には勝てません。
だからこそ、「痛くなってから」ではなく、「悪くなる前に」行動することが大切です。
あなたの歯は、今この瞬間も少しずつ年を取っています。
しかし、正しいケアを続ければ、80歳でも自分の歯でしっかり噛むことは十分に可能です。
歯は一度悪くなったらよくならない――だからこそ、悪くしない努力を。
その小さな積み重ねが、10年後、20年後の自分を守ってくれるのです。
この記事を書いた人は中村区にある歯医者
かすもりおしむら歯科・矯正歯科・口腔機能クリニック 院長 押村憲昭
